むかしばなし

「国王は私を心配してくれたけれど、王女はそうでもなかった。……王位を継がなかったルナの方が心配だったみたいでルナもそっちに懐いてたしね。いじめられるような事はなかったけど、姉だから、次期の主だからという言葉で突き放された覚えはある。国王も国王で期待を寄せていたから、そう振る舞いざるを得なかった。今思えばもうそこですれ違いは始まってたのよね……」

「なんというか、サナさんとルナさんの性格形成が見える話ですね」

とある夜のちょっとした時間、子供の頃のサナさんの話を尋ねると、楽しい話じゃないわよと言いながらも語られたのは厳しい家庭環境の話だった。ルナさんとすれ違い始めたきっかけを語るサナさんの口調は、確実に思い出を語るそれになっている。

「……でもルナにはルナの苦労があった。コエに戦わせられて、本音でぶつかり合ってようやく気づいたわ……私も随分とルナには酷いことを言ってきたって気づいた」

そう言ってサナさんは静かにソファにもたれて、胸の内を確かめるようにため息を吐いた。けれどその表情に後悔は見えない。

「……でも結果的にそれがよかったんだと思うの。すれ違った時感は戻って来ないけど、今の関係は悪くはないもの」

「最近のお二人は十分仲良くなりましたよ。兄弟喧嘩くらいはするときゃしますから」

「そんなものかしらね?」

「そんなもんです」

喧嘩しかして来なかった私がいうのだから間違いない。サナさんはその冗談に気づいたのかクスクス笑ってくれた。